大倉集古館

幻の竪笛オークラウロの演奏を収めたCD第三弾「オークラウロ ー蘇る幻の笛ーはるかな旅路」発売中

コレクション・出版物

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大倉集古館では、国宝3件、重要文化財13件、重要美術品44件を含む約2500件の美術・工芸品を所蔵しております。その分野は多岐にわたり、当館で開催する館蔵品展などで、その粋をご紹介しております。

また、所蔵品や特別展の出品作品を掲載した出版物なども販売しております。

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大倉集古館では休館の間、指定文化財(※重要文化財「如来立像」を除く)を中心とする主要なコレクションを東京国立博物館に寄託しています。
東博での展示のスケジュールについては、先方にお問い合わせください。  東京国立博物館 http://www.tnm.jp/

出版物

  • CD OKRAULO 画像
  • CD オークラウロ 3rd album
    オークラウロ
    -蘇る幻の笛- はるかな旅路
  • CD OKRAULO 2 Rainbow prism 画像
  • CD オークラウロ2
    Okraulo2 Rainbow Prism
    Youtubeより視聴できます
  • 大倉喜七郎とオークラウロ 画像
  • 大倉喜七郎とオークラウロ
    ※CDは付属していません
  • 国宝 古今和歌集序(巻子本) 画像
  • 国宝 古今和歌集序(巻子本)
  • 大倉集古館の名品 画像
  • 大倉集古館の名品

ご購入はお電話・FAXでお申し込み頂けます。(電話:03-5404-4040/FAX:03-5404-4007)
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オークラウロを演奏する大倉喜七郎と伊庭孝(ピアノ)
(1936年)

小湊昭尚(右)
元永拓(中央)
松下尚暉(左)
©須田泰成

オークラウロ―可能性の向こう側へ―

田中知佐子

ホテルオークラ創業者として知られる男爵・大倉喜七郎(おおくら きしちろう・1882~1963)が、自ら得意としていた尺八で、若い頃の英国留学時より親しんでいた西洋音楽を奏でたいとの思いから、フルートのベーム式キーシステムを取り入れた金属製の「大倉式尺八」を十数年に亘って考案・制作し、オークラウロの名で公表したのは昭和10(1935)年であった。それからの約10年間、喜七郎のパトロネージの下でまさに打ち上げ花火のように時代を駆け抜け、そして急速に忘れ去られてしまったオークラウロ。

平成24(2012)年に大倉集古館よりリリースされたCD《オークラウロ OKRAULO》は、その前年に当館で開催された展覧会「大倉喜七郎と邦楽―“幻の竪笛”オークラウロを中心に―」の併催イベントであったオークラウロ・コンサートを契機に、そこで使用された1935年製の管の音色を録音に遺そうという目的から制作されたものであった。

私は担当学芸員としてこの展覧会を企画担当し、邦楽器、特に尺八の歴史や、戦後における発展に興味を持ち、喜七郎が大正末から昭和初期に夢見た「理想の尺八」が、現代にどのように再生され得るのか、かつての楽器の音色の再現に続いて、オークラウロによる音楽表現の新たな可能性に思いを馳せるようになった。前作から3年半の年月を経てリリースの運びとなった二枚目のCD《オークラウロ OKRAULO 2―Rainbow prism―》は、蘇ったオークラウロの未来のために、多彩な夢を詰め込んだ実に盛り沢山な内容となった。

本盤のサブタイトル《Rainbow prism》は、ソプラノ、アルト、バスのオークラウロ・トリオが作り出す三角形のプリズムを通して、奏者と作編曲者総勢7名それぞれが織りなす虹色の光をイメージして名付けた。それは、オークラウロの未来を予感させる各楽曲の個性のきらめきでもある。それぞれを個別にお楽しみ頂けるのは勿論のこと、アルバムに収録されたすべての曲を演奏し、「オークラウロの新しい可能性の広がりに確かな手応えを感じた」という尺八・オークラウロ奏者の小湊昭尚(こみなと あきひさ)が歌わせる色とりどりの音色の広がりを、是非とも全曲を通じて感じていただければ幸いである。

さて、本盤製作の前に、オークラウロ再生のためにまず取り組んだのは、楽器を保管・展示するだけでなく、現代の奏者が使用する生きた楽器として再製作することであった。しかしながら、美術館・博物館という立場からオリジナルの復元という理念を重んじつつも、製造元であるフルートメーカーを巡る当然ながら戦前とは異なる現状において、ほとんど未知ともいえる楽器を製作する途上には思った以上の困難があった。今回は、現存する数管のオークラウロの中で、写真資料によって1935年に初めて公表された当時の1管であることが特定される、わかまつ製の「大倉式尺八」を再製作におけるオリジナルとしたが、材質を真鍮から銀に変更したこと、歌口の形を現代的なものに変えたことにより、音色の選択という点では大きな転換を迫られることになった。とはいえ、歌口のデザインを担当した泉州尺八工房の三塚幸彦(みつか ゆきひこ)氏、オールハンドメイドで楽器の製作を行ったアキヤマフルートの秋山好輝(あきやま よしてる)氏の協力により、2012年末には現代版のオークラウロの試作品第一号が完成し、その後も何度かのマイナーチェンジを経て現在に至っている。

次に、楽器の衰退とともに途絶えてしまった奏者の育成である。2011年の最初のコンサート、そして前作CDの録音(わかまつ製オリジナル管を使用)から一貫してオークラウロの演奏を行って来た小湊は、楽器を現代版オークラウロに持ち替えた後も、これまでに大倉集古館やホテルオークラでのコンサートを中心に、NHKテレビ「首都圏ネットワーク」、「新感覚音楽朗読劇 SOUND THEATRE“eclipse”」などの出演を重ね、今ではその演奏活動のパイオニアとしても注目されるようになっている。これらの活動を通じて、当初より喜七郎が目指した西洋楽器との共演という面において、現代のジャズやポップスというジャンルに一定の適合性を見い出せたように思う。本盤にも参加しているギタリストの愛川聡(あいかわ さとし)と齋藤純一(さいとう じゅんいち)、そしてヴァイオリニストの土屋雄作(つちや ゆうさく)は、演奏とともに作曲、アレンジにも個々に才能を発揮し、現代的な音楽センスの中に、オークラウロの音色や表現力に着目した新しい魅力を楽曲に吹き込んでくれた。

また、本盤ではもう一つの試みとして、オークラウロ・アンサンブルの再現という大きな課題に取り組んだ。当館には、標準管であるソプラノ・オークラウロのほかに、1940年代に作られたとみられるイギリスのフルートメーカー、ルーダル・カルテ社製のアルト管とバス管が所蔵されており、これらを用いて合奏を行いたいというのが長らく関係者の大きな夢となっていた。現代版オークラウロでの演奏の方向性が固まったことで、いよいよこの夢の実現に一歩近付く段階となり、数十年間使用されていなかったアルト管とバス管を演奏可能なまでに修理し、泉州尺八工房の歌口デザインによる頭部管を再製作することになった。

そこに、奏者として元永拓(もとなが ひろむ)と松下尚暉(まつした なおき)が新たに加わった。元永は、戦前にバス管を吹いていたことが写真資料によって分かる福田蘭童(ふくだ らんどう・オークラウロ奏者としては真聴)を師匠筋に持ち、「縁あるこの楽器との邂逅により、先人が求めた“夢”を垣間見た(元永)」とのことである。古い管に新たな息を吹き込み、尺八ではあり得ない音域への挑戦を続けている。松下は、東京藝術大学の邦楽科在学中よりアルト管の演奏を始め、「70年以上前の古い楽器だが、違和感なく楽しめた(松下)」そうで、幼少時より尺八とともに習得したフルートの演奏技術により、オークラウロ演奏の新しい境地を切り拓こうとしている。

楽器と奏者が出揃い、録音に向けての楽曲制作を作曲家の大曽根浩範(おおそね ひろのり)に委嘱することが決まったのが、2014年の夏頃のことであった。アルト管とバス管を交えたオークラウロの音色を遺す初めての録音に向けて、本来であれば演奏の精度をより高めるための十分な準備期間を取りたかったが、このタイミングを動かすことが出来ない諸事情があり、レコーディングまで1年に満たない短い期間内でこの困難な仕事を遂行できたのは、奏者のみならず作曲者、楽器製作者を含むメンバー全員の真摯な熱意があってこそだったと思う。何より、和と洋の境界を自在に行き来するオークラウロならではの音楽が生み出される、確かな手応えを見出すことができたことは大きな収穫となった。

 

本盤が、尺八の奏法が織りなす独特のニュアンスと、フルートの滑らかな操作性による音質の均一さが併存する、まさにハイブリットといえるオークラウロという楽器の魅力と、これからの可能性の一端を提示し、その向こう側を想起させるような一枚となれたなら幸いである。最後に、この録音の実現に並々ならぬご尽力を頂いた浜松市楽器博物館の嶋和彦館長をはじめ、ご協力頂いたすべてのご関係機関、ご関係者の皆様に心より感謝申し上げたい。
(大倉集古館副主任学芸員)

           
オークラウロ 0kraulo 2 ―Rainbow prism―
演奏
  • 小湊昭尚 Akihisa Kominato (ソプラノ・オークラウロ)
  • 松下尚暉 Naoki Matsushita (アルト・オークラウロ)
  • 元永拓 Hiromu Motonaga (バス・オークラウロ)
  • 愛川聡 Satoshi Aikawa (ギター、作曲、アレンジ)
  • 齋藤純一 Jun’ichi Saito (ギター、アレンジ)
  • 土屋雄作 Yusaku Tsuchiya (ヴァイオリン、作曲)
  • 大曽根浩範 Hironori Osone (作曲)

収録曲
  • たゆたう(土屋雄作作曲)
  • My Blue Heaven(Walter Donaldson作曲/齋藤純一編曲)
  • 浜辺の歌(成田為三作曲/大曽根浩範編曲)
  • 祈りの舞(大曽根浩範作曲)
  • Spiritual Rebirth(愛川聡作曲)
  • リンゴ追分(米山正夫作曲/愛川聡編曲)
  • Comin’ Thro’ the Rye(スコットランド民謡/齋藤純一編曲)
  • The Water is Wide(スコットランド民謡/齋藤純一編曲)
  • 空を翔ける風になって(大曽根浩範作曲)
  • 越境(土屋雄作作曲)

2015年6月8日、9日 東京・五反田文化センター音楽ホールにて収録
録音・編集 コジマ録音
企画・制作 公益財団法人大倉文化財団・大倉集古館
http://www.shukokan.org
https://www.facebook.com/okraulo.net

ミュージアムグッズ

  • クリアファイル(夜桜・洞窟の頼朝)画像
  • クリアファイル
    (夜桜・洞窟の頼朝)
    210円
  • 一筆箋(古今和歌集序)画像
  • 一筆箋
    (古今和歌集序)
    360円
  • ポストカード 各種 画像
  • ポストカード 各種

    100円
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  • 能装束葉書セット

    1,500円

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